自閉症のこと、「すずちゃんののうみそ」のこと
私の息子は、知的な遅れと自閉傾向のある7歳の男の子です。
生まれたときはまるまると太った元気な赤ん坊で、1歳まで通常の発達曲線をたどる、良く笑うかわいい赤ちゃんでした。
1歳半を過ぎる頃から、あんよと言葉が遅いのが気になり始めましたが、市の発達検診で「個人差があるから。目も合うし良く笑うし大丈夫だよ」と言われて安心していました。
しかし結局、3歳になるころに「発達遅滞」と診断されました。
「発達遅滞」といわれてもピンとこない私は、
「そうか〜発達遅滞か〜、療育を受けたり家庭で頑張れば、追いつく日がくるんだろうな」と思っていました。
ところが2歳まで出来ていたことがどんどんできなくなったり(笛が吹けなくなったなど)、
出始めていた単語がひとつ、ふたつ、と消え始め、意味をなす言葉を口にしなくなり、なんだかおかしな仕草や行動がひとつずつ増えていきました。
発達遅滞という診断名から、私の頭からすっぽり抜け落ちていた「自閉症」についての本を初めて図書館で手に取り、読んでみると息子にあてはまることが多く、それから私は自閉症についての本を読みあさりました。
主治医に「自閉症の傾向が強い気がする」と話すと、主治医はあっさり「自閉傾向あるかもしれませんね〜」と言って、診断書に「自閉傾向あり」と記入しました。あんたの意見はどこ言った!もっと早く言ってくれよ!と心の中で叫んだのを今も覚えています。
そんなこんなで、息子のような世界を持つ少年のお話と、その母親のお話を、手製本として制作したのは自分のためでもありました。
「おとひろい」
「うたうたい」
この手製本がきっかけで、つながることができたのが「アトリエBonami」さんと竹山美奈子さんです。
「おとひろい」によって、私と息子のことを知ってくださったAさんが、Bonamiさんの本をご紹介くださいました。
自閉症の妹さんと、そのお姉さんご夫婦で創作活動を営んでいると聞き、出版されている本を購入して読み、いてもたってもいられずに家族でアトリエまで遊びに行きました。
そのときに展示されていたのが、竹山美奈子さんとアトリエBonamiさんの作品「すずちゃんののうみそ」です。
竹山美奈子さんは、私の息子と同い年の、自閉症の娘さんをもつお母さんでした。
「すずちゃんののうみそ」は、自閉症がどういうものなのかを、子供たちが理解しやすいように丁寧に描かれたものがたりです。
すずちゃんとこどもたちが保育園でともに仲良く過ごした日々。
その毎日に感謝する思いが込められています。
Bonamiの三木葉苗さんの、やわらかくも力強い絵。
描かれたすずちゃんの瞳の輝きは本物で、自分の息子のまなざしも重ねてしまう。
当初紙芝居のかたちで自費出版されたこの本は、必然だったのでしょう、今年の1月に絵本として出版されました。
「すずちゃんののうみそ」岩崎書店
すずちゃんのような子供を持つ親として、この絵本をたくさんの人に読んでいただけたらいいなあと思っています。
私はどうあがいても、息子より先に死にます。
息子が死ぬ次の日まで元気に生きたいと願うけど、難しいでしょう。
その日まであきらめず、自分のことは自分で出来るように育てていくつもりですが、でもどこかでだれかの手を借りなくてはなりません。
難しい専門書を読まなくても、この絵本を読むだけでずいぶん理解が深まります。
自閉症ってこうなんだ、なんだか大変そうなんだな。
でも内側に、面白い世界ももっているんだな。
そんなふうに思える、素敵な絵本です。
理解あるやさしいひとが、むすこやすずちゃんや、おなじ障害を持つ彼らのそばにたくさんいてほしい。
そして一方通行ではなく、その理解あるひとたちにとっても、彼らがやさしいひとであってほしい。
そう願っています。